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 ある若い男性、兵士として戦場へ行く。体は大人になったが、心は子どものままだ。おさないころ友人とした戦争ごっこを思いうかべる。戦争ごっこは無法地帯だった。「弾が当たった」「いや、当たってない」「お前は死体だからしゃべるな」男性はこれから行く戦場で戦争ごっこのようにならないか心配する。同じ隊の友人にたずねる。敵は銃で撃ったらちゃんと倒れるだろうか。友人からは妙な顔をされる。  男性は戦場へやってきた。いよいよ交戦だ。男性の目には子どものころの光景が浮かぶ。友人が止めるのを聞かずに前線へ走りだす。「はずれ。それもはずれ」男性が銃を構える。引き金を引く。敵が倒れる。男性の頭には死や恐怖などない。敵の弾に当たったら倒れればいい。そういう遊びなのだ。男性は敵を追いはらう。追いついた友人が男性を見て言う。こういうやつが生きのこるのかもしれない。わたしたちが失ったなにかを男性は持っているようだ。  不気味な雰囲気の話でした。戦争ごっこのつもりで実際の戦場をかける男性の異常さがおもしろかったです。
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