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 ある上流階級の男性が行方不明になった。男性は着るものに非常にこだわっており、とくにズボンには社交界のだれよりも気を配っていた。しわひとつつくのも許せないほどだ。  そんな男性の行方だが、意外にも男性の友人が海外へ旅行をしたときに発覚した。とある僧院に男性のすがたを認めたのだ。男性は社交界にいたときとは似ても似つかない僧衣を着ていた。友人がなぜこんなところにいるのかと聞くと、男性は「このズボンはすばらしい。いくら着てもひざの部分が丸くならないのだ」とのことだ。  なにかしら深い意味があるのかと思いきや、理想のズボンが僧衣だったという話でした。小噺みたいな話ですね。
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