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「え、エレナ、さん……?」
ーー泣いちゃダメだ。
思っているのに涙は次から次へと溢れ出た。言葉を紡ぎ出す事もできず、何とかしゃくりを止めようとしても息が苦しくなるばかり。足の感覚がなくなって、その場に崩れ落ちた。
それからの事は断片的にしか覚えてない。
別の男性に支えられながら編集部に連れて行かれて。それでも話はできなくて、誰かに家まで送られた。
翌週からは西川さんと別の人が来てくれたけど、漫画を描くどころか会う事すらできなかった。
絵も話も古臭い。
面白くない。
こんなキャラクターいない。
漫画用の机に座る度に西川さんの言葉が脳裏を過ぎった。
一月休載になり、二月休載となり。
まずい、いけないと思えば思う程苦しくなって、学校にも行けなくなった。大好きな漫画と自分の作品が並んだ本棚は見るのも嫌で、布をかけて、泣いて過ごした。
連載はいつの間にか打ち切りになった。
神様は意地悪だ。
やっと気持ちの整理がついてきたのに。
やっと漫画と向き合えるようになったのに。
「西川君、うちの紅一点の榎野ちゃんだ。」
ーー何で……?
何で再会しなければいけないの。
「榎野ちゃんは一番若いけど本当にしっかりしてるから、わからない事があれば教えてもらってくれ」
「榎野さん、よろしくお願いします。色々教えてください」
何でこの人はこんな風に笑っているの。
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