一、

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一、

 株式会社新生出版少年ウィークリー編集部。  週刊誌の現場はいつだって忙しいけれど、印刷締め日となる毎週水曜日は朝から息をつく暇もない。 「田宮先生の原稿あがりました!」  先輩社員が原稿の入った封筒を片手に編集部に駆け込んでくると、手の空いている社員は一斉に動き出す。 「チェック終わったか⁉︎」  編集長が指示を出す間に別の社員が印刷所に連絡をとり。 「はい! 先生の所でほとんど終わらせてきました!」 「よし、ダブルチェックしてまわせっ!」 「はい! 榎野、頼めるか?」 「わかりました! にしうら先生の原稿が届くので見てもらってもいいですか⁉︎」 「ああ!」  私が机に早足で戻る間に、できたばかりの原稿がやっと空いた机のスペースを陣取る。  一つ息を吸ってから、原稿に素早く、でも丁寧に目を走らせた。  練り上げられたストーリー。キャラクターは主役も脇役も、ヒロインも悪役も、全員が魅力的で誰一人見逃せない。  絵もそうだ。キャラクターが活き活きしているのは勿論、細部まで細かく描かれているしトーン一つだって拘りが見える。戦闘シーンの迫力は言葉では言い表せない。  これが『売れる』漫画だ。    
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