83人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
短い打ち合わせを終えて駐車場に戻ると、西川さんは車にもたれるようにして立っていた。腕を組んで俯く姿は様になっている。
中で待っててくださいって言ったのに、なんて思って立ち止まれたのは一瞬の事。
「おかえりなさい」
こちらに気づいた西川さんは人好きのする笑みを浮かべて運転席の扉を開けてくれた。
「……そんな事しなくても大丈夫ですよ。自分で開けますから」
「あ、すみません。つい。でもほら、開けちゃったんで」
「……ありがとうございます」
断る事もできなくて、そのまま車に乗り込んだ。西川さんも反対側から乗り込んで、再び車内に二人きり。行きと同じ沈黙が流れた。
「随分仲がいいんですね」
破ったのは西川さんだ。
「夏樹先生ですか？ 普通ですよ」
「いやいや、いくら担当でも男女であんなに距離が近くはならないですよ」
ーーそれをあなたが言う？
もっと距離が近かった。狙ってやってたくせに。
ーーそれを私に言う？
「確かに夏樹先生は特別かもしれないですね。デビュー前から担当させていただいていて、お互い信頼し合えてますから」
思わず語気が強くなった。
最初のコメントを投稿しよう！