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ほんの一瞬、時が止まったような感覚に陥った。本当はそんな事ないのに、周りから音が消えてしまったような気すらする。
本人が目の前にいるのに、あんな事があったのに、口に出せる西川さんの神経がわからない。
「聞いた事ないな」
「作品有名?」
「結構前ですし当時珍しかった高校生デビューっていう事だけが話題になった漫画家ですから」
もう顔を上げる事もできなかった。
「どれくらい前なの?」
「十年近く前ですね」
「お、それは話題になったろ!」
「俺ちょっと聞き覚えあるかも」
ただ息を潜めて、早くこの話題が終わるように祈るだけ。
「どうなの実際」
「大変でしたよ、高校生のお守りは」
「でも女子高生の担当なんて役得じゃないか」
「美人ならそうですけどね」
「違ったのか!」
「そりゃ残念!」
先輩達もお酒が入っているのはわかってる。でも、それ以上言わないで。ブスだったのはもうわかっているから言わないで。
「今も描いてるのか?」
「女子高生っていうので話題にはなりましたけど、あまり才能はなくて高校生のうちにやめちゃいましたね」
「今はどうしてるの?」
「さあ……連載途中でいきなりやめるって言ったきりですから」
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