一、

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 そうすれば。 「お、エノちゃんだ」 「あのむさ苦しい少年コミック編集部、自分から志望したんだろ?」  注目される。 「どう見ても女性誌だよねー」 「それでやってけてるの凄いわ。私なら二日でギブ!」 「頑張ってるよな」  褒めてもらえる。  そして。 「夏樹先生、お待たせしました」 「いえ! 今来たところですよ」 「良かったです」 「それに、榎野さんを待つのってちょっと優越感なんですよ」  担当させていただいている作家先生達のウケもいい。 「何でですか」 「だってこんな美人が担当編集だなんて誰も思わないですよ」 「またー!」 「あ、本気にしてませんね⁉︎ 他の先生達もみんな言ってますから!」  逃げだと、良くない事だとわかっていても、注目されて褒めてもらえる事に安心する。自然と顔が綻んだ。 「お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」 「また本気にしてない! 俺本気ですからね。今度こそ食事行きましょうよ、俺が売れたのは榎野さんのおかげなんだからご馳走させてください!」 「編集部で持たせていただけるならご一緒させていただきます」 「それ班長か編集長も来るやつじゃないですか!」  ーーああ、女性だと認められてる。  自分より年下の売れっ子漫画家に。スマートでいくらでも選べる立場にある人に。  本気で口説かれていると思う程身の程知らずではないけれど、それでも女性として見られている事実が胸に刺さった棘を少しずつ取り除いてくれる。  だから私は今日も自分を磨く。
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