四、

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 冷静になって考えれば、逃げるべきではなかったと思う。その場で謝罪して、夏樹先生の意向を聞くべきだった。  だけどあの時はとにかく混乱していて、少しでも早くその場を去る事しか考えられなかった。  逃げてしまった手前、何と謝ればいいかわからなくて連絡もできないまま。  悩んでも時間は容赦なく過ぎていく。夜が来て朝を迎えて、また一日が過ぎてしまって。時間が経てば経つ程、余計に連絡しにくくなって。  気づけば年が明けてしまった。  だけど、これ以上はもう逃げられない。 「そっち準備どうだ?」 「温かい料理以外は揃いました! ロビー大丈夫ですか?」 「もう何人かアシさん達来てる! そろそろ先生達も来るぞ!」  煌びやかなシャンデリアの明かりに、ふかふかのカーペットが敷かれた広い会場。広いホールを囲むように豪華な食事のワゴンが並び、バーカウンターには高価なお酒がずらりと並んでいる。  一月三日。年の最初で最大のイベントが新年パーティーだ。  高級ホテルの一番大きなホールを借り切って行うパーティーは創刊以来続けてきた歴史あるイベントだし、何より漫画家達の交流ややる気にも繋がる。他所の出版社に行かないでね、なんて気持ちもちょっぴり入ってる。  そんなビッグイベント、編集部の若手や新入りが不参加なんて許されるわけがない。そして豪華な食事と景品があり、連載漫画家同伴なら家族とアシスタントも参加できるとなれば、余程な事がない限り連載漫画家は必ず参加してくれる。
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