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そんな事を言われたって安心なんてできるわけがない。
何をどう話したのかもわからない、これ以上ここにいたら今度は誰に何を勘違いされるかもわからない。
「ちょっと来てくださいっ!」
楽しそうに笑う夏樹先生を引っ張った。
「先生達に何を言ったんですか!」
「事実を言っただけですよ」
ヒソヒソ声で問いただせば、返ってきたのははぐらかすような言葉。
でも、事実というのが何を示しているかは自分が一番よくわかっている。もう先生達の顔を見れない。眩暈がしそうだ。
「何で……」
「だって透子さんが逃げちゃうから」
「それは、その……申し訳なかったと思います。でも」
「あの一回で終わりにする気ないですから」
しどろもどろになりながら言葉を探すと、夏樹先生はキッパリと言い切った。
ーーそれは、そういうお相手という意味で?
一瞬嫌な予感が脳裏をよぎったけれど、それすらも見透かされたように否定される。
「俺何回も言いましたよね? 透子さんが好きだって」
その瞬間、夏樹先生の顔から笑みが消えた。
「冗談じゃ……」
今まで何度となく好意的な言葉はかけてもらってきたけれど、本気だとは思っていなかった。本気なわけがないと思っていた。でも。
「本気中の本気です」
夏樹先生の顔は嘘や冗談を言っているようには見えなかった。
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