四、

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 夏樹先生と話さなくて済むように。とにかく仕事と夏樹先生の居る場所に集中していた。だから。 「榎野さん」 「はい?」  話しかけられるまで西川さんが近くにいる事なんて気づきもしなかった。 「ちょっといいかな?」  嫌ですと言いたいところだけれど、周りには先生やご家族、中には小さなお子さん達もいる。 「はい」  選択肢なんてあるわけない。  あくまで業務の話であるかのように装って会場の片隅へと移動したけれど、仕事に関係ない話なのは顔を見たらすぐにわかった。 「この前の話だけど、嘘ですよね?」 「何がですか?」 「いい感じの人がいるって」  西川さんは眉を下げながら薄く笑った。 「イブも残業してクリスマスも休日出勤してましたよね?」  夏樹先生と同じ色のスーツを着こなす姿は、世間的に見たらカッコいいのだと思う。ジェルでオールバックにしたヘアスタイルだって似合っているし、スタイルだってあの頃から全然変わらない。西川さんもそれを自覚してる。 「俺は嘘までつく程に魅力がないですかね?」  だから、私なんかに断られた事が癪に触ったんだと思う。
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