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「どうしたの⁉︎」
「夏樹先生と榎野さん、お付き合いしてるんですって!」
「あの! ちがっ」
「えーっ!」
「素敵! 美男美女カップルねえ」
「憧れますー! 夏樹先生ゲットなんて勝ち組!」
止めようとしても、盛り上がる奥様方と数少ない女性アシスタントさん達の勢いは止まらない。この騒ぎで会場中の知るところとなって、あっという間に人だかりが出来上がった。
夏樹先生は人垣越しでもすぐに見つけられた。こんな騒ぎになっているというのに優しい微笑みを浮かべ、会場中央からこちらに手を振ってくる余裕ぶり。
「な、夏樹先生っ!」
助けを求めようとして、更に血の気が引いた。
「榎野ちゃん……?」
「嘘だろ榎野……」
夏樹先生の側には立ち尽くす先輩達。その顔に出ているのは驚きや落胆、失望といった感情ばかりで、好意的なものは一つもない。
「本当ですか⁉︎ 夏樹先生っ!」
「俺は本気です。皆さんの忘年会の後も迎えに行って一晩一緒にいました。今日は俺の方から挨拶したかったんですけど」
「榎野、来なさい」
編集長の言葉は最後通牒に聞こえた。
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