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連れて行かれたのは編集部の荷物置きとして使わせてもらっている控室だ。夏樹先生も一緒に来ようとしたけれど、それは編集長が目で制した。
「榎野、夏樹先生の言ってた事は本当か?」
最後の先輩が入るや否や、扉は静かに閉められた。もう言い逃れもできない。
「それは……」
「忘年会の後一緒にいたっていうのは? あの日、実家に帰るって言って抜けたよな? その後にって事か?」
「……はい」
申し訳なさで編集長の顔は見れなかった。
「いつからだ」
「あの、お付き合いしているわけでは」
「付き合ってはないのにってより最悪じゃないか……」
頭を抱えた班長の言葉が突き刺さる。
夏樹先生の言葉に嘘はない。
一晩を共にしたのも本当だし、その言葉が表す行為も実際にあった。してはいけない事をしてしまった。
「どうします?」
「こんなの前代未聞だろ……」
前方には眉を寄せる編集長と班長。背後には声を落として話し合う先輩達。
入社以来の努力と築いてきた信頼が音を立てて崩れていくのがわかった。
担当作家に手を出してしまうなんて最低の編集だと思われてもおかしくない。
自分がされた事をしてしまった。
新年会をめちゃくちゃにしてしまった。
今まで築いてきた会社や編集部と漫画家先生達との関係をおかしくしてしまった。
「……榎野、とりあえず謹慎だ。後の事は追って連絡する」
「はい……」
厳しい表情の編集長から下された処分に、首を振る権利なんてない。
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