四、

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 できる事は大人しく家に引き籠る事だけだった。  他の担当漫画家や持ち込みの漫画家にも編集部から連絡がいったのだろう、夏樹先生だけでなく他の誰からも連絡はない。まる二日以上携帯が震えないなんて、編集部に配属されて初めてだ。  ただぼんやりと過ごし、自分のしてしまった事を思い出しては唇を噛み締め、泣き疲れていつの間にか眠る。その繰り返し。今までどれだけ忙しくても欠かさなかった美容を意識した食事や肌のケアも、する気にはなれなかった。  携帯が聞き慣れた音を奏でたのは新年会の三日後の事だった。 「はい!」 〈何ともないかっ⁉︎〉  2コール終わらないうちにとれば、第一声は慌てた声。 「……え?」 〈体調は? 吐き気や腹痛は⁉︎ 熱とか出てないかっ⁉︎〉 「何もありませんけど……」 〈……そうか、良かった〉  捲し立てる班長に戸惑いながら答えると、携帯越しにでも安堵の息が漏れたのがわかった。  どうしたんだろう。言葉にする間も無く続けられたのは驚きの言葉だ。 〈榎野、大変な事になった〉 「え?」 〈再来週分、休刊かもしれない〉 「どういう事ですか⁉︎」 〈食中毒だ〉
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