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「……え?」
言われた事を理解するのに時間がかかった。
〈今保健所に調べてもらっているが、おそらく間違い無いと思う。新年会の参加者二十人以上が吐き気や腹痛を訴えていて、症状が重い十三人の入院が決まった〉
食中毒に入院。その言葉に、新年会の時とは違う意味で血の気が引く。
脳裏に浮かんだのは夏樹先生の顔だ。
「入院っ⁉︎ なっ……先生達は⁉︎ 皆さんの容態は⁉︎」
漫画は佳境を迎えたところ。何度もネームを練り直しただけあって、今の章は読者投票も安定してとれているし、課題だったキャラクターのぶれもほとんど感じさせない。何より夏樹先生のペンの走りがいい。考えて描いているというよりキャラクター達が勝手に動いていて、それを夏樹先生自身も楽しんでいる。だから読者も自然と世界に入り込んで読んでしまう。先生も漫画も絶好調な筈だ。
そんな物語と先生の手が止まってしまう。
〈安心しろ。脱水が酷い人はいるが、命の危険はないそうだ。それに先生方は誰一人症状を訴えてない、夏樹先生もな。皆さん会話に夢中であまり食事を召し上がってなかったのが不幸中の幸いだった〉
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