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教えられたホテルは、タクシーに飛び乗れば三十分もかからずに着く事ができた。
「榎野さん⁉︎」
「榎野!」
「榎野ちゃん⁉︎」
だだっ広い研修ホールに、机をいくつかくっつけた作業スペースが十数箇所。
先生達は四コマや短編を連載している人以外は皆揃っているように見えた。編集部の人達は勿論全員いて、他には何人か知っているアシスタントさん達と、恐らく編集部がかき集めたのだろう初めて見るアシスタントさん達。
一番奥の席に座る夏樹先生には私の代わりなのだろう、班長がついてくれている。
部屋に入った瞬間、驚いたような表情が一斉にこちらに向けられたけれど、そんな事気にしていられない。真っ直ぐに中央のテーブルに歩みを進める。
「謹慎してろと言った筈だ。お前にできる事は」
「原稿、私にも手伝わせてください!」
そのまま中央のテーブルで大御所の先生についていた編集長に勢いよく頭を下げた。
「は?」
「背景、ベタ、トーン、何でもできます! やってしまった事の責任はとりますが、せめて何かお役に立ちたいんです!」
ペンが原稿の上を走る音さえも消え、ホールはシンと静まり返った。
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