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「嘘もう⁉︎」
「できてるよ……」
「榎野さん、アシスタント上がりじゃないですよね……?」
こちらを伺っていた周囲から驚きの声が漏れた。
先生はすぐに原稿を確認してくれた。
すごい漫画家の先生に自分の絵を見られている。緊張で小さく息を呑んだけれど、それも一瞬の事。
「完璧! 即戦力! トーンも貼れるって本当⁉︎」
「はい!」
「ならここに35番、で次のこっちに40番か53番ある方貼って! こっちは迫力意識で」
「わかりました!」
すぐに次の指示が出される。即座に椅子にUターンして、トーンに手を伸ばした。
「榎野、お前トーンなんて……」
「できます!」
「だから何でできるんだ!」
編集長の問いかけには答えなかった。代わりに手を動かし続ければ、背後から原稿に影が差し込む。
「……うまいな」
「榎野ちゃんいけそうだから、こっちは何とかなる! 終わらなそうな所にアシ一人回していいから!」
「ありがとうございます! じゃあこっち来て!」
「こっち欲しいです!」
「わかった!」
あっという間に背後が騒がしくなった。
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