四、

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 トーンを貼りながらも、四方から視線が突き刺さるのがわかった。先輩達は勿論、先生達ですらチラチラ振り向いている。でも、漫画の進行を気にしてか、問い詰める人はいない。 「終わりました」 「ありがとう……これ、原稿に寄せてやってる?」 「はい、できる限り。違和感でてしまいますかね?」 「いや上出来! 癖が出るものからやって!」 「はい!」 「こっちある程度終わったら背景やばい人のところに榎野ちゃん回してあげて!」  トーンの次は大きなコマの人混みを任された。  先生の指示は顔は描くけど、あくまでモブとして目立たないようにというもの。黒髪多め、男女比は同じくらいで、顔や服に特徴は持たせない。先生の癖を意識しながらも、とにかく手を動かし続ける。    先生の原稿があらかた終わったら次の先生のところへ。夏樹先生がいるテーブルと反対方向のテーブルに回されたのは意図的だろう。そこでも背景や効果線を任されて、終わりが見えてきたらまた次の先生のテーブルに誘導される。  一時間が過ぎ、日を跨ぎ。  あまりの眠気に歩き回る人が増え、夜食と大量のエナジードリンクが届けられ。  また数時間経ち、原稿が完成する先生もで始めて。  ーー手が痛い。  長時間ペンを握っていた手を振って休ませよう と顔を上げた時には、朝を迎えていた。
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