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ニ、
始まりは十五歳、高校一年生の冬だった。
「透子、電話よ! KAGAYAKI出版の編集部さんだって!」
「え?」
昔から漫画を読むのが好きだった。地味で目立たない私が、漫画の世界では特別を味わえる。違う自分になる事ができる。
それが途中から、自分ならこんな風に動きたい、こんな服を着たいになって、ヒーローではなく別のキャラとくっつきたいになって、とうとう自分で漫画を描くようになった。
最初はノートに走り書きだったけど、お年玉やお小遣いで画材を買う度に、どんどん本格的な漫画になっていった。それが嬉しくて、何作も描いては何度も何度も読み返した。
それだけでも満足だったけど、段々と誰かに読んで欲しいなんて欲が湧いた。でも、クラスメイトや家族に読んでもらう勇気もない。
目に止まったのが『KAGAYAKI漫画新人賞』だった。
募集要項は簡単で、五十ページまでの完結した少女漫画で未発表の物、デビュー経験がなければ誰でもオーケー。これなら私でも応募できる。
そして一番魅力的だったのが最後にあった一文だ。
『応募いただいた全作品に対して評価シートをお送りします!』
読んでもらえる上に感想をもらえる。それだけで十分だった。
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