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そして。
「そうだったんですか⁉︎」
西川さんからも。
ーーああ、やっぱりわからないんだ。
もう堪える事はできなくて、頬に一筋涙が伝った。
「待て、デビューしてたって事か⁉︎」
これは班長。
「はい……」
「だってお前、新卒入社だよな⁉︎」
「……高校生の頃ですから」
「高校生っ⁉︎」
これは同じ班の先輩の声だ。
「え、読み切りとかじゃなく⁉︎」
「はい、これでも連載持ってたんですよ……コミックも出してもらって」
「はあっ⁉︎」
「榎野ちゃんみたいな美人が高校生でデビューなんて話題になったでしょ?」
斜め向かいに座る先生は私が泣いている事に気づいているのだろう、優しく声をかけてくれた。
「そんなわけないじゃないですか。結局描けなくなって打ち切りになりました」
「ペンネームは? 何描いてたの?」
「絶対知らないですよ」
「教えてよ」
再び乞われて一度口を閉じた。
今ならまだ誤魔化せる。でも、これを口にしてしまえば引き返せない。
わかってはいるけれど、もう失うものもない。どうせもう編集部にはいられない。漫画家でいられなかっただけじゃなく、漫画に携わる事すらできなくなる。
もうどうにでもなれという気持ちが勝った。
「愛川エレナという名前で、少女漫画家をしていました」
「ハッ……?」
背後から乾いた声が漏れ聞こえた。
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