四、

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 ーーどうしよう。  静まり返った室内で、今度は急に冷静になってきた。  目の前には未完成の原稿。言われたトーンもまだ終わってないし、他の先生達だってまだ完成していない人が大半だ。何としても終わらせて読者に本を届けないといけないのに、皆の手を止めてしまった。  この雰囲気を変えて作業に戻らないといけない事はわかってる。でも、どうすればいいのか何も思い浮かばない。  またじんわりと涙が浮かんだ。  そんな雰囲気を壊してくれたのは、一つの声だった。 「透子さんにダサいとか頭大丈夫ですか?」  書き間違える筈もない。夏樹先生の声だ。バッと振り返ると、ここに来て初めて夏樹先生と目が合った。いつもと変わらない瞳が真っ直ぐにこちらを見ている。 「ちょ、夏樹先生!」 「接触しないでくださいとお願いしたでしょう!」  先輩達が慌てたように夏樹先生に駆け寄るけれど、先生が悪びれる様子はない。 「だって本当の事でしょ」  それどころか椅子から立ち上がり、真っ直ぐこちらに向かって来る。自分でもわかる程に心臓が波打った。 「忘年会の終わる頃を狙って電話したら透子さんが泣いてるんですもん。何があったのかと思ってましたけど、西川さんが傷付けたんですね」
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