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「え、いやあのっ」
「俺には透子さん以上に魅力的な女性なんていないと思いますけど」
狼狽える西川さんをよそに、まるで私と西川さんとの間に割り込むように入ってくる。その真剣な顔から目が離せない。
「ほら、酷い事を言った人のせいでこれ以上傷つく必要なんてないですよ。そんな事より、俺とのこれからを考えてください」
夏樹先生はそう言うと、その綺麗な顔をゆっくりこちらへ近づけた。慌てたのは編集部だ。
「な、夏樹先生っ!」
「榎野、やめなさい! とりあえず離れろ!」
「漫画家と色恋沙汰なんて聞いた事……」
ただでさえ展開についていけていないのに、四方から焦りの声が飛んでくる。
そんな中だ。
「あのさ」
今まで黙って見守っていた大御所の先生の声が響き渡った。
「榎野ちゃんが悪者にされてたけど、別に作家と担当が恋愛してもいいと思うし、手を出したの夏樹君の方じゃない?」
「……え?」
思わず聞き返せば、他に驚いているのは先輩達だけ。先生方と元からいるアシスタントさん達は当たり前とばかりに頷いてみせる。
「そうそう! ずっと俺達にも絶対手を出さないでくださいとか牽制すごかったし」
「新年会も毎年ずっと榎野さんの事見てるし」
「だから手を出したのは榎野ちゃんじゃなくて夏樹先生の方なんじゃないかと思ってたんだけど……」
視線は夏樹先生に集まった。
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