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西川さんはいつだって優しい言葉をかけてくれた。
クラスメイト達よりずっと大人で、椅子を引いてくれたり扉を開けてくれたり、立ち居振る舞いもスマートだった。色々な事を教えてくれて、たくさんの経験をさせてくれた。
鮮やかな色のスーツを着こなす姿はカッコ良くて、会う度に心臓がドキドキした。
恋に落ちるまで時間はかからなかった。
「西川さん! どうしたんですか? こんな所で、」
「ちょっと早めにこっちに来れたから、この辺で待っていたら会えるかと思って。一緒に歩こう。途中で打ち合わせ用のケーキでも買っていこうか」
「はい!」
西川さんに会えるのが嬉しくて。
「どうですか…」
「うん、いいね。コマ割りもうまくなってる」
「やった……」
「次はこのライバルキャラを際立たせてみたらどうかな。読者が共感や同情をしてしまうような設定を付け足すか、もう少し嫌な奴にしてしまうか。読者の心を掴むのはキャラクターだ」
「はい! ありがとうございます!」
いつからか西川さんに褒められたくて漫画を描いていた。
西川さんがいて、家族が喜んでくれて、学校中の人が注目してくれて、たくさんの人が読んでくれる。漫画を描くのが楽しくて仕方なかった。
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