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「ほんと? おめでとう! 合格だったら開けようと思ってワイン買っておいたの。良かった」
妻はいそいそと夕食をテーブルに並べ始めた。いつもより豪華で品数も多かった。
「絶対受かると思ってた。だって毎晩遅くまで勉強してたもんね」
「ダメだったらこの料理どうするつもりだったんだ?」
「明日私がお昼に食べようと思った。太らなくてすんで良かった」
妻は嬉しそうにワインのコルクを抜いた。
でも妻は何でそんなに嬉しいんだろう。夫がいち従業員というより店長という方が皆に自慢できるからか? 給料が上がるからか? これから今よりハードな毎日が訪れるというのに気楽なもんだ。
せっかくのご馳走を前に俺は食欲が無いことに気がついた。
「店長なんてやりたくない……」
「え、どうしたの?」
「だって今以上に忙しくなるんだ。休みも気楽に休んでいられない。売り上げとか従業員の事とかクレームとか。みんな俺の肩に乗っかるんだ」
「……だね」
脳天気にはしゃいでいた妻も神妙な面持ちになり俯いた。と思ったら満面の笑顔で顔を上げた。
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