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「じゃあ家の事は全部私の肩に乗っけて。あなたは仕事の事だけ考えればいいよ」
「でもそれじゃお前が大変になるだろ」
「大丈夫。これから手の抜き方勉強するから」
手の抜き方、か。
「完璧に出来なくても怒らないでね」
「そんなの構わないよ」
「まだ新米主婦なもので、ご迷惑おかけします」
「俺こそ新米夫で気が利かないけど」
「新米同士、これからも仲良くしようね。新米店長に乾杯!」
そうか。新米だと開き直れば気が楽だ。最初から完璧にできる人間なんていない。手の抜き方さえ知らないヒヨッコだ。それを無理に隠そうとして虚勢をはっても見破られるのがオチだ。うん、その手で行こう。みんなに育てて貰うつもりで頑張ってみるか。気持ちが軽くなった俺はワインを一気にあおった。
「あれ? このワイン……」
「バレちゃった? ふふ。実はこれノンアルコールのなんちゃってワインなんだ」
「え?」
「赤ちゃんが酔っ払っちゃうといけないから」
「え!」
「実はね、今日産婦人科に行ってきたの」
「そうか……! おめでとう!」
今夜はなんちゃってワインでも十分に酔える気分だ。
〈終〉
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