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HMDSの表示に二機の追撃機が急激に近づいて来ているのが見える。私はND表示に視線を移した。
「父島は十一時の方向、十五マイルね。これで三十五回目。空母から脱出できて十二回目……」
そう呟きながら膝の上のLSSを見つめる。この中で愛おしい娘が眠っている。ここまでは前回と同じ。でもここから変える。
「あの雲の中へ、今度こそ」
大きく頷くと左前方の雲に向かって機体を旋回させる。その時ロックオン警報が鳴り響いた。
『FOX3!』
無線から追撃機がミサイルを発射した声が響く。その瞬間、機体は雲の中に突っ込んだ。視界はほぼゼロ。しかしミサイルはあと三秒で着弾する。
爪先を足下に引くと左手でLSSを抱え、両膝の間の赤いレバーを右手で力強く引いた。その瞬間、座席下のロケットモーターが点火し、私は操縦席から射出された。
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