灰かぶりの玩具

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灰かぶりの玩具

────ギィ······ギィ······ギギィ······  経年劣化の激しい木製ベッドの軋み音が響く。  視線のすぐ先には壁。  灰色の壁にはシミやヒビが目立ち、その数を把握している私は、答え合わせをするように無言で数える。  うつ伏せとなった私に覆い被さった男の影が、前方の壁にかかっては退き、かかっては退き、と一定のリズムを刻む振り子のように動いている。  荒い息を立てる彼とは違って私は何も感じず、虚空の瞳で壁を見つめていた。 ◇  ◇  ◇ 「ふぅ······また使わせてもらうぜ」  事を済ませた男は部屋を出ていく。  一糸纏(いっしまと)わぬ姿の私は、未だに壁を見つめている。  私はオモチャというものを与えられたことはないが、子どもが使ったあとに放置されたオモチャの状態というのは、今の私のようなものを指すのかもしれない。  私は······兵士たちの玩具だから。  
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