30人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
灰かぶりの玩具
────ギィ······ギィ······ギギィ······
経年劣化の激しい木製ベッドの軋み音が響く。
視線のすぐ先には壁。
灰色の壁にはシミやヒビが目立ち、その数を把握している私は、答え合わせをするように無言で数える。
うつ伏せとなった私に覆い被さった男の影が、前方の壁にかかっては退き、かかっては退き、と一定のリズムを刻む振り子のように動いている。
荒い息を立てる彼とは違って私は何も感じず、虚空の瞳で壁を見つめていた。
◇ ◇ ◇
「ふぅ······また使わせてもらうぜ」
事を済ませた男は部屋を出ていく。
一糸纏わぬ姿の私は、未だに壁を見つめている。
私はオモチャというものを与えられたことはないが、子どもが使ったあとに放置されたオモチャの状態というのは、今の私のようなものを指すのかもしれない。
私は······兵士たちの玩具だから。
最初のコメントを投稿しよう!