灰かぶりの玩具

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 大海原に浮かぶたった一つの島。  そこに存在する『帝国』と『公国』という2つの国が数百年に渡って戦争を行ってきた。  数年戦っては休戦を何度も繰り返し、今やっている戦争は18年続いている。  帝国と公国────2国間の戦争が激しいこの時代に、私は帝国にて生を授かった。  いや······授かったという表現は私にはおこがましいかもしれない。  私の母親は生前、公国人であり帝国軍の奴隷だった。  慰みモノとして使われ、私を含めて何人も産み落とし、その後も使われ病を発症し、死亡したという。  母が有していた公国人特有の黒い髪と小麦色の肌、それと誰とも分からない父の青い瞳を受け継いだ私は、母の姿を見たことがない。  母の愛情を知らず、知っているのは痛みだけ······。  私は生まれた時から『痛み』を教え込まれ、心を宿さないまま物心がついた。  母と同じように使われ、使われ、使われ······この秋で16歳を迎えた。  母と同じ運命を辿っていた私だが、母と違うところがある。  それは······子どもを『授かれない』ということだ。  それは何故か。  私は先ほど、生まれた時から『痛み』を教え込まれたと述べた。  痛みとは広義にわたり、様々だ。  例えば、『子宮が破裂した』······なども含まれる。  例え話は実例として存在し、当事者の私は母とは少し違う道を辿っていくことになった。  違う道······それは────
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