テンション

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 私は炬燵に入り、スマートフォンを持ち、友達みんなに新年の挨拶をする。ラインだったり、メールだったり、SNSだったり、人によって使い分けているのだ。みんな素早く返信が来る。私と同じで遅くまで起きていたんだろうに、やはり寝ていないのかな。  庭ではクロが散歩に行きたいのかキューンキューンと鳴いている。 「お母さーん、早くー」 「まだですよ、お父さんが起きてきてから挨拶しましょう。クロも待っててくれますよ」 「お父さんはノンアルコールビールじゃなかったの?」 「お父さんもお母さんと同じです。日頃の仕事の疲れがあるんでしょう」  なんだ、みんな素面だったのか。それにしては人生ゲームをやったりジェンガをしたり、かなり盛り上がって騒いだ。負けた人は罰として勝った人のいうことを聞くという決まりで、危うく好きな男の子の名前を言わされそうになったのだ。  友達からはぞくぞくと新年の挨拶が来る。「おめでとう」「おめでとう」 私は「お母さん、お母さんもパートの友達に挨拶しなくちゃでしょ。私、お節料理の手伝いするよ」と言った。 「あ、そう。じゃあ、刺身を切ってください」 「りょうかーい」  頷いてキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。タコの刺身と鮪があった。私のお父さんはタコが大好きだ。回転ずしに行くと必ずタコを食べる。なんでそんなに美味しいのか分からないが、お母さんはお父さんの好物を把握しているのだろう。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加