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ドタドタ、ドタドタ。階段を下りて来る音がする。お父さんが起きて来たようだ。慌てて来たのかセーターを後ろ前に着ている。
「お父さん、セーター」
「んん、何か変か?」
「たぶん、後ろが前だよ」
私はクスクス笑う。
「あっ、新年早々やっちゃったな」
お父さんは真っ赤になる。いや、いや、昨日の私のテンションに比べれば全然、恥かしくないって! 私は話をはぐらかす。
「今、刺身を切ってるよ」
「おお! 今年のタコはどうだ!?」
「美味しそうだよー」
本当はタコより鮪のが好きだが、お父さんはみんなが自分と同じものが好きだと思っている。
「新年の挨拶をしてお屠蘇を飲んだらクロの散歩に行ってくるね」
「クロもお友達に挨拶しないとだもんなー」
平日は学校から帰ってから散歩に行くが、休日は朝の9時くらいに散歩に連れてっている。公園のグラウンドで一緒に走ったりして私の運動にもなっている。そこで犬の散歩友達とよく合うのだ。犬同士が「よく会いますね」「今日は天気がいいですね」と言い合っているとは思えないが、でもそんな雰囲気はある。年が明けてクロもお友達に会いたいだろう。
お父さんがお銚子を持って私のおちょこに日本酒を注ぐ。私もお返しにお父さんとお母さんに注いであげる。
「明けましておめでとう御座います」
「本年も宜しくお願いします」
みんなでおちょこを合わせると少しずつ口に付けた。私は数の子に手を伸ばした。
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