テンション

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「家でさ、人生ゲームとかジェンガやらない?」  私は思い切って訊いてみる。 「いいよー。僕、お正月は暇だもん」  家に帰るとお父さんはすっかり上機嫌になっていた。ビールの缶がたくさん炬燵の上に並んでいる。こんなに飲んだんなら今日の初詣は延期かな。 「お!ノリナ、お友達かな?」  お父さんが嬉しそうに顔を綻ばす。 「うん、みんなでゲームやろうって言ったの」 「よーし、負けた人は罰として勝った人のいう事をきかなくちゃいけないんだぞ」  またか。でも好きな人の名前は言えない。目の前に居るんだから。けれど、酔っているからなのかお父さんがボロ負けだった。夕方までみんなで遊ぶ。 「夕ご飯も食べて行く?」 「いいんですか?」  幸也くんは白い歯を見せて笑う。この日も私は恥ずかしながら夜はテンションがあがってしまった。私はお母さんに自慢のように話す。 「あのね、麻薬が付いたマフラーをしてたの! それをね、レオが嗅ぎ分けたんだよ!」 「分かった、分かった」  お母さんが苦笑する。ああ、今年はなんて言うか色々な始まりだ。いったいどんな年になるんだろう。そう思っていると幸也くんが両手を畳に着いた。 「あらためて、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します」 私は慌てて正座をした。お母さんもなぜか横に並んだ。 「明けましておめでとうございます」      終わり
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