テンション

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 明け方に夜のテンションが恥ずかしくなって目が覚める。昨日は大晦日ということもあり、思いっきり激しくはしゃいでしまった。家族といえども顔を見るのが照れ臭い。私はノリナ。高校2年生だ。  昨日の夜はお鍋を食べて最後のしめにそばを食べた。お父さんとお母さんはビールを飲んで、私以上にテンションが高かった。お母さんはそれでも早く起きてお節料理の準備をしている。大人って凄いなと思って訊いてみた。 「お母さん、二日酔いとか大丈夫なの?」 「ああ、昨日の夜に飲んでいたのはノンアルコールビールだから」  なんと! アルコールで盛り上がっていたわけじゃないんだ。ますます大人って凄いと感心する。じゃあ、素面できゃあきゃあ騒いでいた私が落ち込むことはないんだな。人間ってどうして夜のテンションと朝のテンションが違うんだろう。夜は恥ずかしいことも平気で言ってしまう。昨日は危なく片思いの相手を言ってしまうところだった  昨日大晦日だったから今日は元旦だ。テレビでは着物を着た芸能人が和気あいあいと騒いでいる。私は犬のクロの散歩に行こうと考える。クロはラブラドルレトリバーだ。小学生の時に家に来た。 「クロ、お散歩しようねー」  照れ隠しにと、火照った頬を冷ますために冬の風でも浴びて来よう。 「お母さん、クロの散歩に行ってくる」 「お屠蘇を飲んでからいきなさい」  我が家は毎年、お屠蘇をおちょこに一杯飲む。小さい時からの習わしだ。お父さんはそのままビールに移行してダラダラと飲んでいるが、午後には初詣に行くのが恒例だ。 「はあい、私、高校生だけどさ、日本酒にお節料理って合うのが分かるよ」 「なにを、ませたこと言ってるの」
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