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わかる、わかってしまう。秋保は今日剛典に別れを告げるといってた、その足で彩佳の元へいったのだろう。そして人生で最大の告白をしたのだ、それは受け入れられた、父からの電話でも彩佳の家族が来ているといっていた、あまり喜ばしい空気は感じられなかったのは、これだろう。
「そっかあ……それは困ったなあ……」
天井を仰いでしまう、こんなところで引くわけにはいかないのだ。
「まさか今日逃げられるとは思わなかったな」
「結納だったって聞いてる、本当にごめん、あなたにすごい恥をかかせたことになる、俺なんかじゃ無理かもしれねえけど、一生かけて償う」
「……償う、ねえ……」
ならば彩佳を返してくれといいたい、だが既に彩佳の両親も、彩佳本人も剛典を選んだのだ。
大きなため息が出た、勝手に突っ走ってしまったのだと理解した、どこかで驕っていたのだろう。
「──しかたないね、君の勝ちだ、素直に諦めるよ。償いは必ず実行してくれるのかい」
「もちろんだ。でも、命くれとか彩佳を譲れとかはナシだぞ」
「そこまで非常識じゃないさ」
大和は余裕をもって笑顔を見せる。
「彩佳はこのまま僕の秘書として働いてもらいたい」
「──んだとぉ?」
なお、そばに置いておこうというのか、剛典は眉を吊り上げる。
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