#10 それぞれの旅立ち

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#10 それぞれの旅立ち

4月、初出社の日。 既に通い慣れている彩佳に連れられ、大和の元へ来た剛典は大きな声を上げてしまう。 「ふ、えっ、なん……!」 大和の前に立っていた秋保が「あら」と応じる。 「お久しぶりね」 聞いて不思議そうに皆の顔を見るのは田中だ。彩佳が大和との婚約を解消し、新たに婚約をした剛典が来るとまでは聞いているが、秋保の話までは聞いていない。 「ひさっ、えっ、いやっ、え!?」 事情を知る彩佳は大丈夫、大丈夫と剛典の背を叩く。 「少しの間、教育係として、いてくれるって……」 さすがにやばいだろうと彩佳も大和もいったが、秋保は自分以外に誰が教えられるのだと引かなかった。 剛典はじりじりと後ずさりを始めるが。 「逃げるな、小僧」 秋保がぴしゃりといってから笑顔になる。 「大丈夫よ、安心しなさい」 いずれ説明してやらねばと思っている、全ては自分が仕組んだ罠なのだと。卑怯な男のレッテルを負ったままでは可哀そうだ。 「まずは挨拶からよ」 そう宣言する秋保に、彩佳は剛典を押し出し「頑張ってね」と言葉を添えた。 「彩佳はこっちにおいで」 大和が手招きで呼び寄せる。 「おい、てめえ、職場に私情挟むんじゃねえ」 すぐさま剛典が噛みついたが、
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