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探偵はBARにいるらしいが、CAFEには小説家がいる。
僕はカフェで読書していた。
推し作家の最新作を買ったのだが、
自宅まで待ちきれず、書店と同じフロアのカフェに腰を下ろしていたという訳だ。
書店に行くたびに、
あぁ、ここに平積みされてみたいなぁ、と呟く。心の中で。
そう。僕は小説を書いている。
味志ユウジロウというのが作家名だ。
右隣の席に座った女性が、タブレットを開いた。
覗き見するつもりはなかったが、僕が拠点にする小説投稿サイトが視界に入ってしまった。
それにしても、綺麗な女性だ。
読者さんかな?
作家さんかな?
気になりつつも、本を読んで紛らわせた。
スマホのプッシュ通知があり、本を閉じて確認した。
エ●リスタには、ページコメント機能があり、
新着のペコメはスマホに通知されるのだ。
最近、僕の作品を読んでくれている女性(多分)読者さんからのペコメだった。
読んでもらえるだけなく、こうして反応をいただけるのはとても嬉しい。
もしかして、隣の方がペコメ主かも知れない。
僕はそのままエ●リスタの通知画面のまま、テーブルの右側にスマホを置いた。
僕のスマホに表示された画面に気づいた女性が、恐る恐る声をかけてきた。
「もしかして、エ●リスタのユーザーさんですか?」
「あ、はい」
「実は私、小説書いているんです」
あ、僕も……と言いかけたが、
代わりに
「そうなんですね。読んでみたいです。どんな小説を?」
と返した。
「ジャンル迷子なもので、色々と思いつくままなんですが」
「雑読なので、読んだことがあったりして」
「アハハ。だったら嬉しいです」
「差支えなければ、作家名を教えていただけますか?」
「女性と分かるとストーカーされそうで、男っぽい名前なんです」
彼女は、えくぼを作った。
逆に男性なのに、女性を騙るケースもあるだろう。
「女性は大変ですね。それでは聞かない方が良いですね」
「あ、でも。これもご縁だし。教えちゃいます」
「ありがとうございます。読ませていただきますね」
「私、味志ユウジロウという名前で書いているんです」
「え!」
君は一体誰なんだ?
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