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「いったい何の話を?今朝、何があったんですか?」
女性はテーブルにカップを置くと、僕の前に座った。
「今朝じゃないわ、もう10年も前。私たちが治験していたスリーピーホロウには、動物実験ではわからなかった重篤な副作用があったの」
「副作用と言っても、眠気と軽い記憶障害くらいしか・・・」
「そう、その記憶障害の方。最初はいいの。だけど長く飲んでいると、記憶を保持できなくなる。あの薬は記憶を空洞化してしまうの」
「どれくらい?」
「人にもよるけど、だいたい数年から10数年。君は私と・・・若い頃の私と昨日ZOOMで会議をして、それから記憶が空洞化して、今朝10年ぶりに復活したってわけ」
なんてことだ!たった一晩が10年だなんて!そういえば、今朝鏡を見た時は、まだコンタクトレンズを付けていなかった。顎をさすると、伸びた髭がマスクから長くはみ出している。
ジェシカはため息をついた。
「そして、私はプロポーズされず、婚期を逃しちゃったわ!」
〜終わり〜
ワシントン・アーヴィングに敬意を表して
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