うつろ

4/5
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 僕はジェシカに電話をかけて、事情を話した。カフェで待つように言われ、コーヒーを飲みながらぼんやり待っていると、ドアが開いて中年の女性が入ってきた。彼女はカウンターでコーヒーを受け取ると、僕のテーブルにやってきた。 「どなたですか?」と、僕は尋ねた。 「ジェシカよ、もちろん」  僕が狐につままれたような顔をしたことに、女性は眉をひそめた。 「私、そんなに老けた?」  老けた?ジェシカなら、昨日ZOOMで顔を合わせたばかりではないか?この女は、何を言っているんだ? 「私たちの会社は潰れたわ。君はリップ・ヴァン・ウィンクルってわけ」 「会社が潰れた?リップ・ヴァン・・・って?」 「むかしむかし、リップ・ヴァン・ウィンクルが山で美味しいお酒をふるまわれた。目が覚めて町に戻ってみたら、みんなすっかり歳とっていた」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!