かえす、かえす。

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 そんなどこの馬の骨ともわからぬ相手に、一億円なんてとんでもないお金をポンと渡せるような物好きなんてこの世にいるはずないのである。リンクをクリックしたら最後、個人情報を抜かれるか逆にお金を取られるかのどっちか二つに一つなのだろう。 「こういう詐欺の奴ってさ、ちょっとギャフンと言わせてみたいよねえ。やり方次第では、マジでお金取れることもあるらしいけど?あげるって向こうは書いてるんだしさ」 「あー、そういうのもあるねえ」  セナは苦笑しながら言う。 「でも、女子高校生がやるにはめんどいっしょ。……というわけでせっかくだから、ノマちゃんにちょっと面白い、都市伝説みたいなのを教えてあげるー。なんかね、迷惑メールを利用して面白い現象を起こすことができるんだってさ」 「ん?」  実は、私とセナとリカの三人は、都市伝説系や怖い話が好きで気が合ったグループでもある。特にセナは、都市伝説に関して詳しいことでも有名だった。きさらぎ駅、などの話を分析して、独自の考察を披露してくれたこともある。将来はオカルト系ヨウチューバーになるんだ!なんてことを言っていたが、彼女なら本気でなれそうだと個人的には思っていた。ああいうのは、視聴者が興味を魅かれる話題と、固定視聴者をゲットできるような独自の内容を提供できるかどうかが最も重要であるはずなのだから。 「迷惑メールにって面白い考察があるのですよ、ノマちゃんさん」  にやり、と笑って言うセナ。 「普通のメールってさ、相手の存在をお互いが認識した上で行うものでしょ。ハンドルネームも知らない相手に送りつけることなんかそうそうないわけ。でも、迷惑メールは違う。向こうは本当にランダムで、“そのメアドの持ち主が存在してるかどうか”さえも認識しないで片っ端から送ってるわけよ。だから向こうにとって、ノマちゃんは女子高校生であることを知らないどころか、存在してるかどうかもわからない……幽霊みたいな存在なわけ」 「ふんふん」 「で、実はこれはノマちゃんにとっての相手も同じ。迷惑メールを送ってくるんだから業者だろうなーって想像はつくけど、実際どんな組織か個人かなんてまったく分からないでしょ。送ってきているのだから存在はしてるんだろうけど……極端な話、本当に生きている人間が送ってきてるかどうかの確証さえないわけ。つまり、送信元も受信元も一種の幽霊みたいなもの、というか。そういう、極めて特殊なやりとりなわけよ。ふわふわしているというか、正体不明というか」 「なるほど、それで?」  なんだか面白そうな話になってきた。私は思わず机に身を乗り出す。
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