かえす、かえす。

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かえす、かえす。

『おめでとうございます!  ranran5656 ☆ yapooo/nono/jo 様に、一億円の賞金が当たりました!  今すぐ下のアドレスをクリックして、お振込みを完了してください!  なお、このメールを受信してから二十四時間以内に御手続が完了されなかった場合、権利は失効いたしますのでご注意ください』 「あーまたコレだよ、めんどくさ」  私はぐでー、と教室の机につっぷして言った。 「リカちゃんからメール来たかと思ったのに、こんな時に迷惑メールとか!うっざ!」 「あー、メール待ってる時にそういうの来るとマジでうざいよね」  お昼休みの時間。私と一緒に雑談に興じていたクラスメートのセナは、苦笑いをして返してきた。冬休みまでもう少し、高校一年生が終わるのもあと僅か。まだ受験には遠いということもあって、私達の間にもどこかダレた空気が蔓延している。試験も終わったし、なんとなく授業にも身が入らない。早く冬休み来てくれ、と思いつつ、ダラダラと毎日を消化している。  そんな中、私、セナ、リカの仲良し三人組のうちの一人であるリカが、風邪をこじらせて学校を休むようになってしまった。リカとは会えない日でも、毎日メールやらLANEやらでやり取りしていた仲である。それが、最近はそのメールの返信でさえ遅れがちという状況。心配して、ついスマホから目が離せなくなるのも仕方ないことではなかろうか。  同時に。そんな時にここぞとばかりに送りつけられてきた迷惑メールに、ものすごーくイラッと来てしまうのも。 「なーにがおめでとうだ、ちっともおめでたくないんだっつーの」  私はべーっと舌を出してスマホ画面を睨む。 「本当にお祝いしてんなら、マジで一億円よこしてみろっつーの!そんだけお金がありゃ、リカちゃんの風邪だって一発で治したるわゴラァ!」 「だよねー、それこそ海外に手術に行きますとかなっても一億円あれば足りそう。ちなみにノマちゃん、送られてきたメアドはあってんの?」 「あってるー。でも、本当に何かお祝いで発送してくれるってならさ、ちゃんと私の名前書くはずだよね。内海乃真(うつみのま)様って」 「だよねぇ」  こういう迷惑メールには特徴がある。~様、の欄に名前が書いておらず、かわりにメールアドレスが入っているということ。確かにranran5656というのは、私のメアドであっている。が、メールアドレスだけなら入手する方法などいくらでもあるし、適当に組み合わせた文字をランダムに入れているだけとも考えられるのだ。残念ながらと言うべきか、人に教えにくいような複雑な内容にはしていない。適当にかたっぱしから組み合わせて行けば当たりそうなメアドではある。大手のyapooの機種だから尚更に。  要するに、相手はこのメアドの主が、内海乃真という女子高校生であることさえも知らないで送りつけてきているということだ。
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