ワシは路地じゃ

　もう少し詳しく言うと路地の概念じゃ。
　似たモノとして山の概念（大文字）と川の概念（鴨川）がいる。あいつらは町が賑やかになるのが気に食わないらしく、町の中心地から少しずつ離れていった。ワシは人がガヤガヤと狭い路地にひしめき合い、山や鉾を見る祇園祭の時期が嫌いではないので町の中心地に居続けている。
　今までワシら三人（人？）は近くにいたから大きな音を出せば、なんとなく連絡し合えたのだが、あいつらが少し町から離れてしまったため狸や狐が物事を伝達してくるようになった。
「どうやら今年も祇園祭は中止のようです」
　なんと…ワシにとっては一年や二年どうって事ない時間だが噂の「ころな」とはそんなにすごいモノなのか。
「すごいなんてもんじゃないです。人間はマスクをつけてずっと変装しています」
　…ん？変装すると「ころな」に見つからないのか？それとも「マスク」の隠れ身の術がすごいのか？狸のいう事じゃからなあ。
　はて…と思っていると天狗が飛んできた。天狗はマスクをしていたが鼻丸出しだった。お前そういうとこじゃぞ。