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ザ・黒歴史誕生日
「お誕生日おめでとう!」
「えっ!?」
大学の構内にて。すすっ、と差し出されたのは白い紙袋だった。金色の蝶々が散っているのは、とある高級ブランドの特徴である。
これめちゃくちゃ高い奴では、と私はつい受け取ってしまった紙袋をまじまじと見つめた。
「サヤカ、君がずっと欲しがってただろ、“カンザイ”のバッグ。その、僕なりに一番素敵だと思うのを選んだんだ。気に入ってくれると……嬉しいんだけど」
もじもじと恥ずかしそうに言う彼の名前は、ケイジ君。私と同じ大学の同級生。なんとも可愛らしく頬を染めながら、それから、と続ける。
「君の誕生日にかこつけて、で悪いんだけど。今日に逢ったら言おうと思ってたことがあってさ。……お願いがあるんだ。僕と、結婚してほしい」
「あ、え……」
「ゆ、指輪はあとで一緒に買いに行った方がいいと思ってまだ買ってないんだ、サイズ合わなかったらまずいし!じゃ、じゃあ!へ、返事はゆっくりでいいから!ゆっくりでいいからね、サヤカ!」
「あ、ちょ、ちょっとー!!」
私が何かを言うよりも先に、彼はどっぴゅーと走り去ってしまった。
後には高級バッグの紙袋を抱えた私が一人。
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