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妃 鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?
鏡 それは、白雪姫です。
妃 えっ。
鏡 白雪姫です。
妃 パードゥン?
鏡 すぃらゆぅきひぃめデース。(外国人訛りっぽく)
妃 はぁ?昨日まで「それはお妃様あなたです」って言ってたじゃないの。
鏡 すぅ…(息をすって)
言いたいことがあるんだよ!やっぱり白雪可愛いよ!
すきすき大好きやっぱ好き!やっと見つけたお姫様!
世界で一番愛してる!
…というわけで、本日より白雪姫に推し変いたしました。
お妃様には長らくご愛顧いただき、誠にありが…
妃 (パリーン!鏡を叩き割る)
…あぁ、とうとうこの日が来るなんて!
例えどんな手を使ってでも、私は屈しないわ。
(手を叩いて)
白雪ー?白雪姫を呼んでちょうだい!
姫 はい、お呼びですか、お母様。
妃 ねぇ、白雪。聞いたわよ。
「世界一美しい人ランキング(魔法の鏡調べ)」一位ですってね。
姫 はい、ありがとうございます。
妃 ところで、あなた、この国のルールってご存じ?
姫 …えっと?ルールですか?
妃 お妃の命令は絶対ってこと。
というわけで、早速だけどこの林檎を召し上がってくださる?
姫 えっ、もうこのタイミングで?話の流れ、ガン無視ですか?
妃 召し上がれ?(圧)
姫 …明らかに毒々しい色と臭気を発してますけど。
妃 だって毒林檎ですもの。
姫 げっ。
妃 なによ、お母様のほんのささやかなお願いが聞けないっていうの?
姫 さっき、はっきり「命令」って言ってましたよね?
こんな怪しいもの、口にできません。
妃 ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと食べなさいよ!
(取っ組み合いのけんかになる)
姫 はあはあはあ…やったわ…
妃 ごっ…ごふぉっ!(林檎を食べさせられて、むせて倒れる)
姫 ちょっと手こずったけど、
これで名実ともに世界で一番美しいのは、この私、白雪姫よ。
姫 (手を叩いて)
小人!そこにいるわね?出て来なさい。
小人 はい、ここに。(隠密のように天井裏から現れる)
お怪我はございませんか!
…はっ、この方は…?
姫 問題ないわ。毒の効果で眠っているだけ。
計画通りこの方を…「義母」を小人の家に運びなさい。
くれぐれも丁重にね。
小人 はっ。(素早く消える)
姫 さようなら…「世界で一番美しかったお妃様」。
(扉が勢いよく開けられる)
王子 姫!…あぁ、噂に違わず、世界一美しい…!
姫 …どなた?あなたノックの礼儀作法もご存じないの?
王子 あぁ。御無礼をお許しください。
私は隣国の王子、プリンス・チャーミング。
このたび「世界一美しい人ランキング(魔法の鏡調べ)」
第一位に見事輝いた白雪姫に一目お逢いしたく、
こうして馳せ参じました。
どうか私と結婚してくださいませんか。
姫 まぁ!隣国の王子様ですって?
もちろん喜んでお受けいたしますわ。
私、こうして王子様とお逢いできる日を、
ずっと心待ちにしておりましたのよ…ずっとね。
王子 なんと!そうでしたか、白雪姫。
では早速、国に帰って結婚式の日取りを決めましょう。
姫 あぁ、でもお待ちください、王子様。
王子 王子様、とは堅苦しい。
チャーミングと呼んでくれませんか。
姫 ふふっ…チャーミング。
王子 なんでしょう、私の美しいスノーホワイト。
姫 私、ひとつだけお願いがあるの。
王子 あぁ、このチャーミングが、
愛するお姫様の願いを叶えてさしあげましょう。
姫 愛の証に…あなたのキスが欲しいの。
王子 ははっ、なんて、可愛い人なんだ。
これから毎日、満天の星の数ほど、あなたにキスを贈るというのに。
姫 いいえ、未来の約束よりも、今すぐ欲しいの。
王子 おぉ。そんな悲しい顔を見せないでおくれ。
姫 …お願い。
鏡 一方、小人の家に連れ去られていたお妃様は…
姫 ごほっ…かっ…(むせて息を吹き返す)…ここはどこ?
小人 おぉ!気がつかれましたか、白雪姫様。
姫 …私、お母様に無理矢理、毒林檎を食べさせられて…
それで…はっ、お母様は?
白雪をこんな場所に監禁するなんて、許せない!
私やっとお母様を抜いて
「世界一美しい人ランキング(魔法の鏡調べ)」一位になったのよ?
王子様からのプロポーズも秒読み段階だっていうのに。
あの、嫉妬深い美容オタクのくそばばぁが!
小人 お妃様は…お妃様は、もう…うぅぅ(泣きだす)
姫 はぁ、何?
小人 お妃様は…ご自身の命を懸けて
白雪姫様を守られたのでございます。
姫 …一体、何の話?
小人 今まで各国の見目麗しいお姫様方が、あの王子と結婚しては、
幾度となく非業の死を遂げられてきました。
姫 非業の…死、ですって?
小人 最初に異変に気がつかれたのは、お妃様でした。
各国の姫が隣国に嫁がれた後、
間もなくして祖国と往信不通となり、
その後、ひっそりと亡くなられていたことがわかりました。
(回想シーン)
妃 おぉぉぉ…またしても
「世界一美しい人ランキング(魔法の鏡調べ)」から
一人、姫君が消えたわ。
それも、全てあの隣国に嫁いでから!
このままでは、うちの白雪もいつか…あぁっ恐ろしい!
小人 お妃様、どうか我ら7人の小人に
あの王子の身辺調査をお申し付けください。
隣国に嫁がれた姫様方の不自然な死…
その隠された謎を、必ずや明かして御覧にいれましょう。
小人 そこでわかったのは、隣国の王子の嗜虐性。
「世界一美しい人ランキング(魔法の鏡調べ)」
上位となられた姫を手中に収めたあと、
ご自身の快楽のために、手に掛けてしまうという事実でした。
(回想シーン)
妃 ふぅ、とうとう完成したわ…間に合ってよかった…。
小人 お妃様、それは…?林檎でございますか?
妃 この毒林檎はね、食べさせた相手の身体に
精神ごと入れ替わることができるアイテムよ。
白雪姫に食べさせれば、私は白雪姫の身体に。
そして白雪姫は、私の身体に入れ替わるの。
小人 それをどうなさるおつもりです。
妃 白雪と入れ替わった状態で、私が隣国に嫁ぐわ。
小人 それでは…お妃様は…。
妃 …ねぇ、小人。
いままであの王子の元に6人も刺客の小人を送りこんだけど、
王子の返り討ちに遭い、
とうとう小人はお前1人になってしまった。
小人 それは!私達の命は、元よりお妃様に捧げたものです。
妃 白雪がランキング一位になる日…その日が私たちの最終決戦日よ。
あとのことは頼んだわ…白雪をお願いね。
小人 …それがお妃様の願いでした。
姫 そんな…お母様はどうなったの?
小人 今、白雪姫様が元の姿に戻られたということは、
お妃様の魔力が切れたということ。
…急いで城に戻りましょう。
鏡 白雪姫と小人がお城に戻る、少し前…
城内では、毒林檎の魔法で白雪姫の容姿をしたお妃様と、
白雪姫を狙う王子のラブシーンが繰り広げられておりました。
姫 愛の証に…あなたのキスが欲しいの。
王子 あぁ、もちろんだとも…(口づけのあと、苦しみ始める)
…ぐふぉっ…がはっ…!
姫 ふふふ…どうやらよく効いているようね。
王子 なっ…何を…
姫 あなた、各国の美女を集めてずいぶん派手にやってたそうね。
でも、これで、私が最後の女。
(魔力が切れ、本来の妃の姿に戻っていく)
世界で一番美しい「白雪姫」から王子様へ
最初で最後のプレゼントよ。
王子 その姿は…おまえ、白雪姫じゃないな…
紅い口紅が毒だったのか…ごほっ…
妃 さぁ、もう一度、口づけを交わして一緒に果てましょう?
…さようなら私の白雪姫…!
(扉が勢いよく開けられる)
姫 …お母様!
小人 ちっ、遅かったか?王子もお妃様も倒れてる!
姫 お母様の息がまだある!
小人 お妃様、失礼つかまつります。
(毒林檎を妃に食べさせる)
姫 それは、あの毒林檎!小人、お母様に何を!
(妃と小人の体が入れ替わる)
妃 ごほっ…お妃様…どうか白雪姫様とお幸せに。
小人 …白雪…?どうしてここに?
あなたは、私の手で…城から逃がしたはず…
姫 小人が…小人がお母様の身代わりに…
お母様に毒林檎を齧らせて…あぁっ…。
鏡 こうして、部屋に残されたのは、隣国の王子様とお妃様の死体。
そして、死の間際に小人の姿と入れ替わったお妃様でした。
姫 お母様…私、誤解しておりました。
お母様があのランキングに執着されるのは、
ご自身の美貌を周りにひけらかしたいためなのだと。
まさか、私の身を案じてくださっていたとは知らず、
本当にご迷惑をかけて…
お母様にも、小人たちにも取り返しのつかないことを…!
小人 いいのよ。白雪。
義理とはいえ、私の可愛い子どもなんですもの。
子どもはね、周りの大人が護るものなのよ。
だから今まで通り「お母様」と呼んでくれて構わないわ。
姫 いえ…それはちょっと…今はあまりにもギャップが…。
小人 あぁ、そうよね。今は私、小人の姿ですものね。うふふ。
姫 ぷっ…くすくす。
小人 というわけで、はい。
この林檎を召し上がってくださる?
姫 えっ?この林檎は…?
小人 口先だけの謝罪なんて、大人の社会では通用しないのよ?
あなたの誠意、ここでみせていただける?
姫 お…お母様?
小人 んーん、あなたは何も知らなくていいの。
さぁ、召し上がれ?(圧)
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