第2章. 遭遇

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〜バージニア州ノーフォーク〜 表向きは国際宇宙科学研究所として、TERRAの最先端技術を結集し、科学者を育成している。 その敷地内に併設してあるビルが、厳重に警備されたEARTH 本部である。 地球絶滅の危機が判明して以降、この研究所はスヴェルコフ博士の臨時研究所となり、優秀な科学者達が集められた。 今回、最大の危機は、想定外の未知の訪問者ではなく、太陽である。 「オリバー長官❗️」 第二の物体が大気圏に突入した頃、博士が突然長官を呼んだ。 尋常ではない声に、慌てて観測室へ向かう。 そこには、世界唯一の恒星専用望遠鏡がある。 入ると直ぐに説明を始める博士。 焦りが隠せない。 「長官、これが5分前までの太陽。問題は、こ…ここからです」 録画映像がスロー再生に変わる。 丁度、太陽の中心辺り。 一瞬白く光り、瞬く間に黒い点が生まれた。 「黒点の発生か?」 「長官…ここは太陽の赤道とされる位置で、普通黒点は発生しないとされています。黒点がなぜ発生するのか、諸説ありますが、今回のものは、周期外でもあり、外的なものの影響により発生したものと考えられます」 「隕石の衝突か?」 「いえ、たとえ地球大の隕石でも、太陽の直径は地球の109倍ですので、大海の荒波に小石を投げ込む程度。これは、ISSを破壊し、東京を襲った兵器によるものではないかと」 「では、残りのワームホールからの攻撃は、太陽に⁉️」 「我々の知る質量の概念が、全く通じない謎のエネルギー。そして、今の…いえ正確には、8分前の太陽がこれです」 「何だ、これは⁉️」 ざっと20箇所余りの黒い点が、地球から見た太陽の中心部に発生していた。 「恐らくこれらの黒点の直径は数万km。熱や光をも曲げる強磁場の(かたまり)です。急激に太陽活動が活発になり、いつ巨大なフレアを生じてもおかしくない状況なのです」 「しかも、地球から見た真正面にか?」 「流動的な太陽の自転と合えば、最悪は…。そうでなくても、余波は必ず来ます」 「オリバー長官、話は聞きました」 1200m上空から、ラブが割り込んだ。 「NASAとロスコスモス社にも連絡し、建設中の宇宙ステーションと、シールドの周期を同期させ、盾にするしか方法はありません」 「そんなことができるのか?」 「できるか、ではなく。やるんです❗️」 ラブとて自信はない。 しかしその声は、可能性を伝えるには十分であった。 「よし、博士はフレア発生の予測と、監視を。皆んなも作業を止めて、博士に協力しろ!」 オリバー長官が本部へ走って行く。 (…よりにもよって、こんな時に) ラブの前方モニターには、大気圏に消えて行く小さな光達と、速度を落とした、直径約2.5kmの物体が3つ見えていた。 ゆっくりと確実に地球へと降下している。 「皆んな、ワームホールからの攻撃は地球にはもう来ない。アイ、ヴェロニカ、この物体の降下予測地点を、再計算して連絡を!」 …いつもの即答が…ない。 その頃、東京にも異変が起きていた。 晴海ふ頭公園を始めとし、救助活動をする人や避難する人々が、急に苦しみ始め、バタバタと倒れていったのである。 「ラブ様、球体は消滅し、どうやら有害なガスか何かが発生した様です。今厚生省と防衛省が疾病対策部隊を編成して向かってます」 「有毒ガス?」 「ガスかどうかは、まだ分かんないわ。ウィルスの可能性も。今ティークが検体を採取して、戻ったところよ」 「ごめんヴェロニカ、そっちは凛とお願い。アイは至急算出を!」 「了〜解❗️」 「分かりました、直ぐに」 ここで今、混乱するわけにはいかない。 「連合艦隊は今どこ?」 「ライオネルのルイスです。米・ロ艦隊は、ハワイ島の北東2000km辺り、多国籍艦隊は、イースター島の東800kmです」 (こいつ…) 「物体の着水による衝撃は心配ないわ、3体は…予想地点に様だわ」 「では、再度予定待機地点へ向かいます」 「アイ、どう?」 「ラブ様の推察通り、最初の地点にコース修正している様です」 「やはり…。通信は?」 「あらゆる方法を試しましたが、反応なし。それから、生体反応も見られません」 「無人?」 「或いは、アンドロイドやロボットは考えられますが…エネルギー反応自体がありません」 (全く未知の文明か…ならば) 「アイ、ステーションの同期と、シールドの移動を手伝ってあげて。コイツは、私が行くわ」 「無茶よ、ラブ❗️」 「ヴェロニカ、私を信じて」 分からないものを眺めていても、意味はない。 また、そんな余裕も今はない。 高度を下げ、加速するラブ。 巨大な3つの球体に向けて…
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