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それは突然始まった。
宇宙ステーション『Kizuna Ship』が、日本の上空を通過しようとしていた頃。
その10km南の軌道を、ISS(国際宇宙ステーション)が通過し、モニターに拡大映像が映る。
丁度T2が、全ステーションの監視システムに、CAPSシステムを接続した時であった。
何かを感じたT2が顔を上げる。
厚い特殊強化ガラス越しに見た、果てのない空間が…揺れた。
次の瞬間。
無数の矢に射抜かれる様に、ISSに多数の穴が空き、僅かに遅れて火花と爆炎が包み込んだ。
咄嗟に、モニター通信ボタンを押すT2。
「全員、何かに掴まれっ❗️」
と同時に、激しい衝撃波と電磁波がステーションを襲った。
「なんだアレは⁉️」
幸いにも、最初に設けた外装部の電磁シールドが機能し、ほとんどの設備は守られた。
高度400km辺りは、熱圏や電離層と呼ばれ、大気の気体分子や原子が存在し、それなりに衝撃波は伝わる。
外部で作業をしていた数名が、機材と共に飛ばされ、文字通り命綱により救われた。
「アイ、シールドを❗️」
T2が叫んだ。
真昼の青空に一瞬光ったISSの最期。
それに気付く者はいない。
が、その後に現れた、多数の燃える火球を見上げ、危険を感じて逃げ惑う。
T2の声が届くと同時に、アイは台場周辺を防御シールドで覆った。
全ての矢が、東京湾一帯に突き刺さる。
寸断され、崩れ落ちるレインボーブリッジ。
晴海埠頭から、芝浦埠頭に至る湾上にいた船舶は、降り注ぐ炎と、高々と上がる水柱に、逃げる間もなく消えた。
「アイ、被害状況は?」
「TERRA周辺500mは、シールドにより無事ですが、レインボーブリッジから南の東京湾、及びその沿岸は壊滅状態です」
「T2、アレは何なの⁉️」
「分からねぇ。レーダーにも映らず、突然現れて…ISSがやられた」
「クッ…」
世界中からの通信が殺到する。
その時。
「アイ、戦闘防御態勢。何かが…いる❗️」
「ラブ❗️」
TERRAの最上階。
特殊強化ガラスの居住フロアに、ラブがいた。
壊滅した東京湾を見下ろし乍ら、指示を出す。
(いったい何が…)
「シールドで都心方面を防御。迎撃ミサイル、コスモレーザー砲を発射態勢で待機」
周辺に地鳴りが響く。
地下にある戦闘装備が迎撃体制をとった。
「アイ、周辺の人達をTERRAへ避難誘導して」
あらゆる掲示板に避難指示が表示され、アイのアナウンスで、TERRAの入り口が全て開いた。
慌てて走り込む人々。
「ヴェロニカ、昴、監視衛星とTERRAの監視スコープで、晴海ふ頭公園横100mの海面を!」
その時、ゆっくりとソレは現れた。
直径3mほどの黒い球体。
波立つ海の場所だけが平面となり、海面に接する様に浮かび上がる。
「拡大投影、熱源、生体スキャン」
モニターに、映し出された球体。
さすがに外観には、多少のダメージが見えた。
「あの攻撃は、コイツを狙ったものね。こんなところにいたなんて!」
「ヴェロニカ、留守をありがとう。今から下ります」
「アイ、ヘリの凛とティークを呼び戻して」
異国の服から戦闘スーツに着替え、装備を身に付けて専用エレベーターに乗った。
スキャンデータが、アイからラブの頭脳に転送されてくる。
(戦闘兵器はなし…か。脱出ポッド?)
「シールドされて、僅かですが生体を感知」
アイが皆んなに告げた。
「シールドはそのまま、戦闘態勢解除。凛とティークは、自衛隊、消防と連携して、被害者の救出に向かって」
「了解」
「ラブ、どこ行ってたのよ全く。了解!」
ラブが着いたタイミングで、アイが告げた。
「EARTHのオリバー長官から緊急連絡です」
全員に緊張が走る。
「ラブです。すみません、今戻りました」
「あぁラブか、第二の流星群が…加速した」
「そんなバカな、軌道上に加速をさせる様な引力はないはず」
と言ったヴェロニカが固まる。
「先のあの球体といい、もう彗星群と呼ぶべきじゃないわ。長官、地球到達時刻は?」
「1時間後だ。予測地点は変わらない」
予定より半日縮まった。
「長官、最初の物体は確認不能な攻撃を受け、今目の前に浮かんでいます。攻撃性はみられず、どうやら脱出ポッドの様です」
「では、次のモノは、それを追って?」
「攻撃されたタイミングで加速したと考えれば、救出部隊かも知れませんが、姿を見せたタイミングと考えれば、追撃とも。いずれにしろ警戒レベルを上げて、あらゆる通信を試みてください」
「ラブ、物体が確認出来なかったワームホールは、あと2箇所あるわ。同じだとしたら…」
つい先程の激しい攻撃が頭を過ぎる。
「だとしても…打つ手はない。空母ライオネル、ルイス・アボット艦長、聞こえてる?」
「はい、全軍聞いています」
「未知の見えない攻撃により、東京湾は壊滅状態。全速力で、全艦隊を遠ざけてください。もし次の攻撃があり、第二陣を狙った場合、巻き添えを避けたいので」
「了解です」
第二陣の着水については、先の物体と同様であることを願うしかない。
あの絶望感は、ヴェロニカとて、簡単に忘れられるものではない。
そうでなければ…世界は終わる。
「アイ、球体への追撃も考えて、東京湾一帯にシールドをできるだけ伸ばして。ここは大丈夫だから」
指示を出しながらも、アイのメモリーから、いない間の情報を、高速で確認するラブ。
「みんな、私は次の来客を迎えに行きます」
「ラブ…死んじゃだめよ」
「らしくないわよ、ヴェロニカ❣️」
自分でもうまく笑えたか分からない。
しかし、前に向くしか道はない❗️
エレベーターで屋上へと向かうラブ。
(…みんなもね)
心の底からそう願った。
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