第2章. 遭遇

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〜TERRA〜 バイオ研究部門で、厳重な隔離体制の中、採取した晴海ふ頭公園の空気と、倒れた人から採取した血液や鼻腔内粘膜を分析していた。 「どんな感じ?」 「ヴェロニカ博士、血液や粘膜からは、ウィルスは見つかりませんでした。ただ…科学部が精密な試験をした結果、空気中に地球上にはない元素の様な物質を確認しました」 その元素らしき物質の構成配列と、量子顕微鏡画像、血液検査結果等を確認するヴェロニカ。 「血中の二酸化炭素量が異常に多いわね。それに…こんな元素配列は見たことないわ」 「どうやら、この物質を吸い込むと、体内の細胞活動が急激に活性化し、二酸化炭素が瞬間的に急増している様なんです」 「つまり、死因は二酸化炭素中毒ってこと?」 「はい。呼吸で排出できる以上の二酸化炭素が、血中に発生したものです」 「空気中でも、3~4%の濃度で初期症状が表れ、7%を越えると意識が喪失して呼吸停止に。20%を超えると、数秒で死に至る…この量なら即死ね。疾病対策センターへデータと連絡を!」 (とりあえず、パンデミックの心配はないか) 死者156名、重傷者3名、軽症者1名。 つまり、その物質が発生した場所にいた、ほぼ全員が死亡していた。 携帯が鳴る。 紗夜からであった。 「もしもし、どうかした?」 「軽症者1名について、晴海総合病院が、至急来て欲しいとのことです」 「分かったわ、私は今ここを離れられないから、状況を聞いて連絡して!」 「分かりました」 「アイ、消滅した球体の生命体は?」 「分かりません、例の3つの球体は、恐らくはアンドロメダ銀河の、惑星ステパールから来たものと考えられます」 「アンドロメダ、ステパール、何それ?」 「惑星ステパールは、ラブのいた大銀河帝国と友好関係にあった星。もし、東京湾の球体にいた生命体が、ステパール星系の者なら、人類とほぼ同じ容姿です。」 「つまり、あの生存者4名に、ソイツがいるかも知れないってことね!ヤバい❗️」 慌てて紗夜に電話を掛ける。 (紗夜、早く出て〜) 〜晴海総合病院〜 病院に着いた紗夜と、刑事で夫の宮本淳一は、報道機関や疾病対策センターの人でごった返す、異常な状況にいた。 「何だ?どう言うことだ?」 「淳、とにかく中へ行きましょう」 玄関や院内には、数名の人が倒れていた。 急いで脈をとる2人。 (みんな死んでる…) そこへ、通報した医師が出てきた。 「刑事さんですか?連絡した医師の羽川です」 「いったい何が?」 「分かりません。突然バタバタと倒れ始めて、パニックに」 「その…軽症者1名ってのは?」 「それが…いなくなりました」 「羽川さん、落ち着いて、何があったのか教えてください」 「は…はい。通報して直ぐに、その患者がいたフロアから悲鳴が聞こえ、私が着いた時には、部屋の中と外で看護師が死んでいて、彼女はいなくなってました」 「それで通報を?」 「それもありますが、これが彼女のカルテで、検査結果です」 「何これ⁉️このデータを至急ここへ」 「しかし…それは個人情報なので…」 「貸せ!」 淳一が奪い取り、スマホで撮影してTERRAへ転送した。 「明らかなのは、は普通の人間じゃないってことね。監視カメラの映像を見せて下さい」 「紗夜、搬送された人の写真なら、たくさん撮られているぜ?」 「だからよ。軽症だった1人はだったはず❗️」 「マジか⁉️」 「はい。確かに男性と聞いたのですが、診察に行くと、ベッドにいたのは女性でした」 警備室に着き、問題のフロアの映像を見る。 医師が病室を指さす。 すると、突然看護師が出てきて、倒れた。 「彼女も死亡していました」 その後、1人の女性が出て来て、エレベーターへ入った。 「私が診察したのは、彼女です❗️」 「玄関の映像を」 エレベーターは、玄関のすぐ近くにあった。 エレベーターが開き、次々と倒れて行く人達。 何人かの男性と看護師が走って出て行く。 そして、暫くして紗夜達が入った。 「他に出口は?」 「非常口はありますが、ロックされたままです。開ければ、ここのランプが点きます」 紗夜の問いに、警備員が答えた。 「彼女はまだ中にいる❗️淳、応援を呼んで」 その後、隅から隅まで捜索したが、結局あの女性は見つからなかった。 玄関から逃げた男性も、発見された男性とは違ったのである。
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