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〜バージニア州ノーフォーク〜
国際宇宙科学研究所。
EARTHとNASA、ロスコスモス社、他にも幾つかの国が参加し、連日結論の見出せない超巨大彗星の議論を繰り返していた。
そんな中、スヴェルコフ博士は、太陽の観察に没頭していた。
先日のフレア以後、黒点は急速に縮小し、フレア発生の可能性は低い。
しかし彼は、気になるものを見つけていた。
最初は、太陽からの電磁波による画像の乱れ、そう考えた。
しかし…観察を続ける内に、地球と太陽の間に何かがあり、それが近付いていると確信したのである。
「スヴェルコフだが、EARTH のオリバー長官を頼む」
「すみません、今国際会議の最中で、終わり次第、連絡いたします」
オリバーは、今日はペンタゴンで、彗星への攻撃の可能性を議論していた。
「分かった。では携帯へ頼みます」
電話を切り、データコピーとロスコスモス社のPCを鞄に入れる。
「博士、お迎えが参りました」
「ありがとう。すぐに行く」
所属しているロスコスモス社から、急ぎ帰国の指示が来ていた。
運用を託されていた、ロシアの国際宇宙ステーションISS消滅の報告が理由であった。
しかし博士としては、アメリカの地で長期滞在し、研究をしていることへの危機感、それが真の理由だと分かっていた。
実際のところ、アメリカとロシアは、激しい宇宙開発競争を、繰り広げて来た。
博士の研究も、本来なら国家機密に値する。
そうさせなかったのは、ロシアのクレール大統領と、アメリカのスミス大統領の間に、ラブが介入したからである。
3、4日で戻ると秘書役に伝え、迎えの車に乗り、空港へ向かった。
〜TERRA地下基地〜
深夜00:25。
ペンタゴンの会議にリモートで参加している。
それと同時にラブは、ティークと凛を派遣して、テロ組織 Silent に共謀している組織 、Messiah の拠点を潰すミッションを行っていた。
「凛です、配置に着きました」
「T2、ヴェロニカよろしく」
戦闘や兵器についてはT2、科学者としては、ヴェロニカが対応する。
「ティーク、中の様子を確認して」
ティークの片目には、スパイアイと呼ぶ、透視能力があった。
「地下2階から地上5階までは、1階の警備員2名のみ。6階に7名、8階は…凄いな」
「最上階は、遅らく通信機室ね」
「ああ、アンテナや発信機、スーパーコンピュータ。まるで機密基地並みだな」
Messiahの関与が分かったのは、ラブが中国東方艦隊を奪還した時。
専用の通信回線を変更した後、ラブは敢えて南方からのアプローチを告げた。
見事にそれを待ち受けていた艦隊。
それは、他に内通者がいることを意味した。
そこでアイに命じて、艦隊との交信を全て傍受させ、一つ一つ確認したのであった。
ラブの情報を発信したのは、ロシアの日本海側に位置するウラジオストク。
ロシア海軍、太平洋艦隊本部がある都市である。
「表向きは軍関連の出版社。ここなら、軍の情報を盗聴するくらい楽勝ね」
「まさか、本部の目の前とは。軍の中にも内通者がいそうだな」
「アイ、ロシアのクレール大統領に繋いで」
今回のミッションは、まだ知らせていない。
「ラブさん、会議は終わったのか?」
「いえ、まだ続いてます。クレール大統領、まずはこれをお聞きください」
アイが傍受した通信を流す。
『やはり気付かれ、回線を変えられた。メシアで何とかしろ』
『分かっている。ラブのジェットヘリが、艦隊の南から、海面ギリギリを接近して来る。待ち伏せて迎え撃て』
『了解した』
「い、今のは…まさか?」
「テロ組織Silentと、貴国ロシアの反乱分子Messiahが交わした通信です。その通りに、艦隊は私を待ち伏せていました」
「我が国もNoah計画のテロに、加担してたとは…」
「今送ったのが、そのMessiahの拠点です」
写真と内部での会話や、窓から撮影した最上階の通信システムの映像である。
「ここは❗️」
「ウラジオストクの海軍司令本部前です。大統領、先ほどの声が誰か、ご存知ですね?」
彼の反応と、微妙な動揺を感じ取ったラブ。
「…恐らく、米・ロ連合艦隊、駆逐艦ヴァイスのチェニレンコ副官だ。すまない、ラブさん」
「どこの国も同じようなものです。貴方が関与してないことが分かって、ホッとしました。後はお任せください」
「いつでもいいわよ」
「凛、ティーク、やって」
「バシュ、バシュ、バシュ!」
ヘリからティークのライフルが、明かりのついた6階の窓を撃ち破る。
騒然とする内部。
その隙に、凛が8階の窓から侵入し、素早く爆薬を仕掛けた。
ティークのヘリが近付いて来る。
躊躇うことなく、ヘリから伸びたワイヤーへ、窓から跳ぶ。
ワイヤーを掴みながら、手首に巻き付ける凛。
そのタイミングで、ヘリが急上昇した。
「ヅドドーン💥❗️」
8階が吹き飛んだ。
軍から、大勢の部隊が、ビルへと向かうのを確かめた凛。
「Mission complete.」
「お疲れ様」
通信を切り、会議に戻るラブ。
が、そこに紗夜からの電話が入る。
更に会議には、衝撃的な連絡が入った。
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