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〜外層圏〜
地球からの距離、約800km。
直方体であった物体は、外部に纏っていた戦闘機や戦艦が50%程離脱し、中心にある巨大な戦艦の姿が現れていた。
監視衛星がその姿を映し出す。
「あれが本体ね、戦闘はラブ達に任せて、シャトルと核ミサイルの準備を進めて。アレを倒したら即発射できるように」
「欧州やアフリカ諸国から、発射準備完了の連絡がありました」
綾波美南がヴェロニカに告げる。
「奴らの裏側ね…計算はできてる?」
「はい、いつでも軌道に乗せられます」
「よし、じゃあ奴等から見えない欧州、アフリカ大陸側は、順次発射を!もし、気付かれて敵が向かった時は、太平洋戦線に参加していない諸国の軍で、対処する様に!」
モニターに、各国の了解ランプが灯る。
(ラブ…時間がない…頑張って)
その祈りと共に。
ふと…ラブを遠くに感じた。
軽い目眩でふらつくヴェロニカ。
超巨大ミサイルを爆破できたとして、その衝撃波は、想像を遥かに超えるもの。
出来るだけ遠くで破壊し、残した核ミサイルを爆破させて、段階的に衝撃波を打ち消す作戦であった。
勝算は…ない。
未だかつて実例のない、未知の作戦である。
エネルギー生命体のアイと2人で、眠ることも忘れて必死に練った策。
でも…自信は微塵もない。
既に作戦は全世界に公表され、シェルターや地下への避難が始まっていた。
それに伴い、様々な人災が、世界中の人々を、いや、自らを、必要以上に追い込む。
お決まりの様に、世界のあちこちで、暴動や略奪が始まった。
そんな彼らは、罪に問われもしない。
おかしな世の中。
方や、この事態を世紀末と称し、神の襲来が如く敬う者達。
目を閉じ、あるはずもない神に、祈りという精神的な武器で立ち向かう者達。
生への道を諦め、自暴自棄と現実逃避から、酔って集って騒ぐ者達。
未知の恐怖に、自分一人では耐えきれず、周りを巻き添えにして命を絶つ者達。
そして…
そんな世界を、テレビで見ながら食を摂り、いつも通りに仕事へ向かうこの国。
この状況下でも、非日常的な世紀末を、他の出来事として眺める国もある。
つくづく淫らで、曖昧な国だと感じた。
浅はかで、危機感に乏しい国だと蔑んだ。
そんな国を、平和や絆や人情、そんな綺麗な言葉で、人道的と説く海外メディア。
無関心。
ある意味、暴動を起こす人々の方が、この国の人々より、正しく感じているのかも知れない。
そんな世界のほんの一部。
ほんの一握り。
こうして、命を懸けて戦っている人達がいる。
それはもう、誰かのためと言う概念を、遥かに超えた世界。
ただ直向きに、自分の使命として。
本当に守るべきものなのか?
この地球の為に、人類絶滅を謀った父、ラルフ・ヴェノコフ。
その想いを継いで、信念の中に愛を持って死んだ姉、チェコノヴァ。
それは、実は正しい選択なのかも知れない。
少なくとも、こんな浅はかな人々に、命を懸けて守る価値はない。
…滅ぶべき者。
この日。
TERRAから、ヴェロニカの姿が消えた。
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