111人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
〜成田空港国際線ターミナル〜
政府は混乱を避けるため、報道規制を敷いた。
IASS Executive Loungeで、サービスウィスキー🥃を飲みながら、行き交う人々を眺める。
(我関せず…か。哀れな奴ら)
「成田空港より、モスクワへお発ちのお客様、只今より搭乗手続きを開始いたします」
アナウンスを聞いて、残りを一気に流し込む。
(До свидания, Япония)
小さめのキャリーケースを握り、席を立つ。
騒がしく入って来た客とすれ違った。
「あれ?」
立ち止まって、その後ろ姿を見つめる。
「どうした、美夜?」
「ん?…いえ、何でもないわ、気のせいね」
鳳来咲の妹、美夜が見た知人。
それが、日本で最後のヴェロニカとなった。
「ほらほら蔵ちゃん、座って静かにして。美夜さんもビールでいいわね?」
「もちろんよ、二杯目からは蔵ちゃんの奢りね、よろしく❣️」
(鳳来…美夜。そんな娘もいたわね)
無感情で想いを馳せ、搭乗ゲートを抜けるヴェロニカであった。
〜プレアデス艦内〜
異空間を自在に操るプレアデス星人は、厄介な敵であった。
突然現れ、消える。
戦闘能力は3人の比ではないが、言語を持たず感情も感じられない、未知の生態系である。
その圧倒的な数に、思うように進めない。
「ラブ、これじゃ切りがない。何とかしないと、太平洋側からの発射に間に合わない」
「何か…おかしい。余りにも多過ぎる」
話しながらも、次々と敵を切り捨てる2人。
「ラブ、あの将軍は、どうやってこいつらを手名付けてんだ?」
パワーと爆薬で敵を葬りつつ、動力源を目指すT2。
「確かに妙ね…圧倒的な私達の戦力に、全く動じもしない。クッ!」
紫外線から作られた光線が、ラブの肩に命中し、衝撃で一瞬歩みがとまる。
しかし、その程度であり、戦闘スーツを貫く威力はない。
「ティーク離れて」
手首のブレスレットから、ワイヤーを発射し、宙へ跳ぶティーク。
「聖拳真雷、極波動撃!」
目の前でクロスさせたコスモブレードが、稲妻の様な光を起こし、背後まで振り切った剣先から放たれた稲妻が走る。
一撃で、周囲数十メートルの敵が燃え尽きた。
が、次の瞬間にはまた異空間から、大軍が現れて元の状態になる。
階段からなだれ下りて来る敵を、強力な一閃でまとめて切り裂くラブ。
(しまっ…た!)
(ビシュ❗️)
切り開いた階上へ跳んだラブの正面。
機銃が火を噴いた。
「グッ、ハァアアッ❗️」
左肩を貫通されながらも、そのまま機銃ごと敵を斬る。
「ラブ!」
「大丈夫、でも…敵が強くなっていくわ」
「それが、こいつらの力か」
倒された分、徐々に進化し、再生する。
それこそが、あの大銀河帝国が、戦力で勝てなかった理由であった。
「このままでは、いつか倒せなくなるかも知れない。T2、早く動力源を破壊しろ!」
「そう焦んなって、やっとたどり着いたところだ。だが…もう少しだけ、時間をくれ」
T2と動力源の間。
5体の巨大なアンドロイドがいた。
「さて、やるか!」
両足のパワーチップをフル活用し、超高速で跳んだT2の肩が、一体の胸を直撃し、そのまま壁まで叩きつける。
そこを、別の一体の振る巨大な斧が襲う。
(マジか⁉️)
寸前でかわした斧が、一体の胴体を切り裂く。
その斧から腕を駆け上がり、跳ぶ。
渾身の力を込めた拳が、敵の顔面を貫く瞬間。
別の一体が振り回したハンマーが、敵の頭部ごと、T2を叩き付けた。
千切れた頭部に、拳が刺さったまま、壁にめり込むT2。
「T2?、どうしたの?T2❗️」
T2の思念を感じ取ったラブ。
「…ちょっと、ちょっと黙っててくれ、ラブ」
そこへ別の一体が振るハンマーが、追い討ちをかける。
「がシーーン❗️」
更に深くめり込んでいく。
「T2❗️」
「だから…待ってろってッ⁉️」
背中から壁にめり込みながらも、片腕は、ガッシリとハンマーを受け止めていた。
「仲間を平気で潰すコイツらに、俺は最っ高に頭に来てんだ❗️マシンを何だと思ってやがる…ウリャアッ❗️」
引き抜いたもう一方の拳が、重なった巨大なハンマーへ炸裂し、腕ごと吹き飛ばした。
「いくぜ」…「カチ」
ティークの仕組みを解析し、自分用に作り上げ、体内に埋め込んだ加速装置を起動した。
T2の体が高速で乱れ飛び、アンドロイドの手足を破壊し、頭を吹き飛ばした。
「ガシンッ!」
壁に足をめり込ませて止まる。
腕の操作パネルを開き、自分の戦闘機を呼ぶ。
全ての武器を今いる位置へ向け、全速発進と同時に、全弾発射した。
「ズドーンン❗️」
外壁を打ち破った機体が、その勢いのまま、動力源に突き刺さった。
「お待たせ!」
「ピシッ…ドドーン💥💥」
艦の動力源が破壊された。
その瞬間、無数にいた敵兵の姿が消えた。
「ラブ、今だいくぞ!」
T2が気になったが、今優先すべきは敵の殲滅。
一気に艦橋へと向かう2人であった。
最初のコメントを投稿しよう!