第6章. 宿命の激戦

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〜成田空港国際線ターミナル〜 政府は混乱を避けるため、報道規制を敷いた。 IASS Executive Loungeで、サービスウィスキー🥃を飲みながら、行き交う人々を眺める。 (我関せず…か。哀れな奴ら) 「成田空港より、モスクワへお発ちのお客様、只今より搭乗手続きを開始いたします」 アナウンスを聞いて、残りを一気に流し込む。 (До свидания(さよなら), Япония(日本)) 小さめのキャリーケースを握り、席を立つ。 騒がしく入って来た客とすれ違った。 「あれ?」 立ち止まって、その後ろ姿を見つめる。 「どうした、美夜?」 「ん?…いえ、何でもないわ、気のせいね」 鳳来咲の妹、美夜が見た知人。 それが、日本で最後のヴェロニカとなった。 「ほらほら蔵ちゃん、座って静かにして。美夜さんもビールでいいわね?」 「もちろんよ、二杯目からは蔵ちゃんの奢りね、よろしく❣️」 (鳳来…美夜。そんな()もいたわね) 無感情で想いを馳せ、搭乗ゲートを抜けるヴェロニカであった。 〜プレアデス艦内〜 異空間を自在に操るプレアデス星人は、厄介な敵であった。 突然現れ、消える。 戦闘能力は3人の比ではないが、言語を持たず感情も感じられない、未知の生態系である。 その圧倒的な数に、思うように進めない。 「ラブ、これじゃ切りがない。何とかしないと、太平洋側からの発射に間に合わない」 「何か…おかしい。余りにも多過ぎる」 話しながらも、次々と敵を切り捨てる2人。 「ラブ、あの将軍は、どうやってこいつらを手名付けてんだ?」 パワーと爆薬で敵を葬りつつ、動力源を目指すT2。 「確かに妙ね…圧倒的な私達の戦力に、全く動じもしない。クッ!」 紫外線から作られた光線が、ラブの肩に命中し、衝撃で一瞬歩みがとまる。 しかし、その程度であり、戦闘スーツを貫く威力はない。 「ティーク離れて」 手首のブレスレットから、ワイヤーを発射し、宙へ跳ぶティーク。 「聖拳真雷、極波動撃!」 目の前でクロスさせたコスモブレードが、稲妻の様な光を起こし、背後まで振り切った剣先から放たれた稲妻が走る。 一撃で、周囲数十メートルの敵が燃え尽きた。 が、次の瞬間にはまた異空間から、大軍が現れて元の状態になる。 階段からなだれ下りて来る敵を、強力な一閃でまとめて切り裂くラブ。 (しまっ…た!) (ビシュ❗️) 切り開いた階上へ跳んだラブの正面。 機銃が火を噴いた。 「グッ、ハァアアッ❗️」 左肩を貫通されながらも、そのまま機銃ごと敵を斬る。 「ラブ!」 「大丈夫、でも…敵が強くなっていくわ」 「それが、こいつらの力か」 倒された分、徐々に進化し、再生する。 それこそが、あの大銀河帝国が、戦力で勝てなかった理由であった。 「このままでは、いつか倒せなくなるかも知れない。T2、早く動力源を破壊しろ!」 「そう焦んなって、やっとたどり着いたところだ。だが…もう少しだけ、時間をくれ」 T2と動力源の間。 5体の巨大なアンドロイドがいた。 「さて、やるか!」 両足のパワーチップをフル活用し、超高速で跳んだT2の肩が、一体の胸を直撃し、そのまま壁まで叩きつける。 そこを、別の一体の振る巨大な斧が襲う。 (マジか⁉️) 寸前でかわした斧が、一体の胴体を切り裂く。 その斧から腕を駆け上がり、跳ぶ。 渾身の力を込めた拳が、敵の顔面を貫く瞬間。 別の一体が振り回したハンマーが、敵の頭部ごと、T2を叩き付けた。 千切れた頭部に、拳が刺さったまま、壁にめり込むT2。 「T2?、どうしたの?T2❗️」 T2の思念を感じ取ったラブ。 「…ちょっと、ちょっと黙っててくれ、ラブ」 そこへ別の一体が振るハンマーが、追い討ちをかける。 「がシーーン❗️」 更に深くめり込んでいく。 「T2❗️」 「だから…待ってろってッ⁉️」 背中から壁にめり込みながらも、片腕は、ガッシリとハンマーを受け止めていた。 「仲間を平気で潰すコイツらに、俺は最っ高に頭に来てんだ❗️マシンを何だと思ってやがる…ウリャアッ❗️」 引き抜いたもう一方の拳が、重なった巨大なハンマーへ炸裂し、腕ごと吹き飛ばした。 「いくぜ」…「カチ」 ティークの仕組みを解析し、自分用に作り上げ、体内に埋め込んだ加速装置を起動した。 T2の体が高速で乱れ飛び、アンドロイドの手足を破壊し、頭を吹き飛ばした。 「ガシンッ!」 壁に足をめり込ませて止まる。 腕の操作パネルを開き、自分の戦闘機を呼ぶ。 全ての武器を今いる位置へ向け、全速発進と同時に、全弾発射した。 「ズドーンン❗️」 外壁を打ち破った機体が、その勢いのまま、動力源に突き刺さった。 「お待たせ!」 「ピシッ…ドドーン💥💥」 艦の動力源が破壊された。 その瞬間、無数にいた敵兵の姿が消えた。 「ラブ、今だいくぞ!」 T2が気になったが、今優先すべきは敵の殲滅。 一気に艦橋へと向かう2人であった。
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