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今回は民宿で三泊する。
こじんまりした宿で、家族で経営しているらしい。到着時に対応してくれたのは娘さんだった。簡単な説明をされ、お風呂と食事の時間を確認して鍵をいただく。
お部屋に入って、まずはお茶で一服。
浴衣とバスタオルが備え付けてありお部屋も清潔感がある。そんなところを見てしまうのは職業柄か。
テーブルの上には一冊のノートがあった。泊まったお客さんが自由に書くためのものだ。
『食事が美味しかった』
『お風呂が気持ち良かった』
『明日のメモ、お湯を用意する』
など、感想やメモ書き、イラストまであった。
「こういうのはいいね」
「お客さんの直の声だね」
「うちも作ろうか」
「いいね」
食事をしてお風呂に入ってお布団を敷く。
「明日の天気はどう?」
雨が多い島だから、天気は一番気になるところ。
「曇りかな、雨は降らなさそうだよ」
明日は雫がさっき話していた苔むす森へのトレッキングを予定している。
「行けそうだね」
「うん、楽しみ」
他のお客さんもトレッキングをするらしく、朝早くから生活音がしていた。
私たちは4〜5時間のコースなので、ゆっくりと準備をして出発をした。宿の人が手配してくれたお弁当を持って。
こういう気配りも嬉しいと思う。
レンタカーで山道を登っていく。
「雫、大丈夫? 車酔いしない?」
「大丈夫だよ、みーちゃん、みかけによらず運転上手だよね」
「どんなみかけよ?」
「運転荒そうにみえる」
「イケイケ?」
「うん、まぁ。でも案外小心者だよね」
「めちゃくちゃ小心者だよ、対向車来ないかビクビクしてる」
「大丈夫だよ、何があっても私がついてるから」
あぁ、これだ。一緒に暮らし始めて気付いた事、雫のこういう男前なところ。
無事に何事もなく駐車場に到着した。
「さぁ、行くよ」
元気よく歩き出す雫。
「え、待って」
慌ててついていく私。
振り向いて手を差し出してくれる。
最高の笑顔とともに。
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