脆弱

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「いらっしゃい、お、美佐ちゃん久しぶりだねぇ」 「マスター、いつものお願い」 「はいよ、あれ、今日は可愛い子連れてきてくれたんだ?」 「可愛いなんて、ありがとうございます。マスター、同じのお願いしまーす」 「はいよ」  最近の若い子は可愛いと言われて否定しないのか。  ちゃっかり隣に座る彼女は、まぁ、確かに可愛いけれど。 「常連さんなんですね」 「まぁね、先週は臨時休業でね、それであの居酒屋さんへ行ったの」 「そうだったんだ。で、海外は旅行? それとも仕事で?」 「仕事だよ」 「美佐ちゃんは、あちこち飛び回ってるよな」  マスターがカクテルを並べながら、話しかけてきた。 「へぇ、かっこいい! 今回はどこへ?」 「ヨーロッパ廻ってた。写真見る?」  ほんとは、そんなにかっこいいわけじゃない。仕事だから気も使うし、なにより疲れる。時差とか身体がついていけないのは、年を取った証拠か。 「見る見る」  一枚一枚スクロールしながら、わぁ! とか 素敵! とかはしゃいでいる彼女の顔を見ながら飲むカクテルも悪くない。 「はぁ、いいなぁ」  最後まで見終わったらしく、カクテル片手にため息を吐いた。 「これから、いくらでも行けるじゃない」 「え、一緒に行ってくれるんですか?」  ぱぁっと明るい笑顔になって、そんなことを言う。 「なんでそうなるの?」 「二人で行ったら楽しそうだから」 「そう?」 「そうですよぉ、絶対楽しいですって、あ、マスターお代わりお願いしまーす」
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